【新刊レヴュー】宝田明 著『銀幕に愛をこめて』筑摩書房
友人のむみちが構成した本が面白ったので紹介します。
『銀幕』って日本語がいいですよね。魔法瓶・銀河・観覧車など
日本語独特の言葉。このタイトルの通り、日本映画界の古くから
最盛期に俳優として沢山の映画に出演した宝田明さん。
子供時代から役者になるまでのお話と映画俳優になってから、現在までの
自身の映画・ミュージカル出演作の話や日本映画界の名監督・往年の
役者の方々との思い出がたっぷり語られてます。
『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』
宝田明さんといえば、NHK朝ドラ『カーネーション』で尾野真千子の祖父役が記憶に
新しいでしょうか。個人的には『あげまん』の時の姿がすごくて忘れられません。
本のはじめは、幼少時代の満州での生活から始まります。
その後の過酷な引揚げの話はすごかった。戦争の壮絶な体験。
飼い犬のケリーと三番目のお兄さんの話は本当に涙が止まりません。
日本に戻ってからも色々で、戦争の影響での貧しさもそうですが
当時の帰国子女という疎外感が色濃くかかれていて、とても切ない。
俳優になってからの話はそれ自体がまるで映画のように語られます。
伝説になるような逸話が多い映画人と仕事をして、おそらく大変な
目にあわれてきたのだと想像できるのですが、宝田さんの語り口は
ユーモアがあるので楽しい話ばかりのように感じさせます。
目配りがききすぎというか、人は様々で人がどんな事を大事にしているかを
汲み取り、それをいかしつつ自身のスタンスを通すみたいなすごい技術!
歌も踊りもできて、外国語にも物怖じないところが素晴らしい。
体当たりの撮影や、撮影所外での人付き合いとかを読んでると心身ともに
体力がありすぎて常人ではないと思います。
この本は、宝田さんの主に映画俳優としての人生が時系列に書かれていますが
各エピソードで出て来る名監督やプロデューサーなどの紹介も一緒に載っています。
宝田さんが所属した映画会社『東宝』を中心に、デビューの昭和28年〜30年代
の映画界の歴史というか様子がすごく感じられて、そこで仕事している人のリアルな
感じがわかるのがとても面白くてしょうがない。
久々に名画座行きたくなっちゃいました。のむみちに感謝です。